僕は夏を好きになった

僕は秋が好きだ。
夏はあまり好きじゃなかった。夏にうかれるような人生ではなかったし、そもそも季節に期待した事がなかったように思う。僕は年中偶然を期待していて、探してた。季節の事なんて考えず、ただただ偶然が訪れるのを待っていた。無駄に強い忍耐を持っていたのか、そうならざるを得なかったのか。
だけど今の僕は…夏に期待するようになってしまった。うかれる気持ちが分かるようになってしまった。
しまった!俺は完全に夏を好きになっちまったぜ!
この夏が終わってしまう日が来るだなんて、そんなことを想像するだけで悲しいじゃないか。そんな気持ちが分かるようになったのはいつからだろう。
文章でも写真でも、切ない気持ちにさせてくれるものには惹かれてしまう。なんにもわかっていない昔の僕は、秋が持つ直接的な切なさを感じて秋が好きだったんだろうか。
夏の裏側にある、こんなにも甘美な切なさに気づかずに。