結局満たされてないや

何年も前の夜のことをいまだに思い出す。きっと一生思い出すのだろうと、今は思う。
そのことについて、もう一度喋りたいと思う。あの時、どう思っていたのか、知りたいと思う。
でも、それでどうするんだ?その後、どうしたい?手を取り合って、よりいっそう切なくなりたいのだろうか。
過ぎ去った何かを思い出し、もう一度体験したいと思っているのだろうか。10年以上前のこと、ほんの2,3年前のこと。
毎日毎日幸せだと思って暮らせたとして、満足なんてしないだろう。
全部丸ごと捨て去って、違う世代を生きてみたい。それでもまだ、その夜を思い出すのだったら、いいよな。人生の終わりに奇跡が起こってもう一度人生をやり直す主人公が、一度目のときに夢見ていたことをどんどん実現していって、なんてラッキーな人生だったんだろうと自分の孫かなんかがはしゃいでる姿を見つめて浸っているときに、ふと、一度目の、それを思い出して涙する。何度やり直したって、手に入れられなかったものは美しく、身を焦がすだけの力があってさ、なんて、安っぽい話か?というか、違うな。それはもう、手に入れているって事なんだろうな。手に入れられないものを手に入れているのか。人生に飽きることができるまで、満たされることなんてないし、満たされないことで満たされているのかもしれない。