今でも軟骨があるのかどうかは知らないまま。

prosugi2008-09-21

高校の卒業式の夜。僕のクラスは、家がちょっとおしゃれな飲み屋をやっているクラスの女の子のお店でお酒を飲んだ。そして2次会が朝までカラオケ。今となっては飲み→朝までカラオケというのはお決まりのコースになってしまっているけれど、高校生の僕にとってはものすごく大きな思い出で、なんだか大人になったような気分だった。
僕にはクラスに気になる女の子がいた。出席番号が近くて理科の実験が同じ班で、僕にとってその時間はとても楽しい時間だった。なぜか自然に話ができた。ナチュラルな、サラッとした、他愛のない、お互い眠たい時にぼそぼそ言葉を交わしては笑顔でいられるような会話。理科の実験はすごく楽しみだった。
その子が2次会のカラオケで眠たそうに、酒で気分が悪そうにトイレに行った。今しかない。そう思って僕は、少しだけ時間を置いて部屋を抜け出した。案の定、トイレの前の洗面台に彼女を見つけた。鼻ピを空けたばかりだったので、入れていた透明ピアスの具合が良くない振りをして僕も洗面台に。
「調子悪そうだね。」
「おぉ、うん。ちょっと酒が...眠いし。歌うるさいし・・・どうしたの?」
「あぁ、鼻ピに入れてる透明がなんか通りきってない感じがして・・・んで痛い。」
「鼻ピ空けたの!?痛くなかった?鼻って軟骨しょ?」
「鼻って軟骨??嘘でしょ?刺した感じそんなことなかったよ。泣いたけどね。」
「えー軟骨だよ。そりゃ痛いよ。鼻はナンコツデデキテル」
「そうなの?」
「ソウ」
「耳だとすぐばれるじゃん?うちピアス空けたら勘当だって言われてんだよね。だからばれにくい鼻にしたんだけど。なんかあんまり鼻にしてる人いないからそれもいいし」
「あー確かに鼻はね...でもピアスいいなぁー。あたしも空けようかな」
「軟骨に?」
「鼻は勇気ないよ。耳だよ。耳の軟骨ならいいかもな」
「やー俺は軟骨に空ける勇気はないなぁ」
「だから鼻は軟骨だって」
・・・・・・・・


「ね、ちょっと外行こうか」
想像以上の展開に俺ってすげぇって思った若かりし日の僕。
3月1日雨上がりの午前3時過ぎ。線路沿いの道から国道1号線を二人で歩いた。町がしっとり濡れていてすごく静かだった。先まで見える信号が一斉に赤に変わり、道路にライトが反射する。
「俺夜中の道路って大好きなんだ。 なんか、良くない?」
「あーなんかわかる。いいよね。」
「なんかさ、でかい道路の真ん中歩いてると『世界に自分達だけしかいない』って気になるじゃん。」
「ははっ。そだね。」
「歩道橋も好きなんだ。狭いヤツ。歩道橋から車のライト見てるといつまでたっても飽きないよ。桜橋のとこ最高だぜ」

「ね、あれパクろうか」
「ははっ。あれ?目立つなぁ〜〜」
「いいじゃん。暗いしちょうどいいよ。」
「まぁちょうどいいっちゃーちょうどいいなぁ」
「これってひっくり返すと消えてるんだよ。」
「あぁ知ってる。」
「しってんの?なんで?」
「だって持ってるもん。中学の頃こーいう系流行んなかった?『予告』磁石とかさ。俺の部屋のゴミ箱に何枚もはっついてるよ」
「流行ってないから」
「まじで?二中じゃ流行ってたんだけどなぁ」
・・
「はい。」
「ありがと」
「やーやっぱ目立つなぁ」
「へへっ」
「なんか似合うよ」
「なにがよ。似合うとかないし。」
「ははっ」
・・・・・
・・・